Doctor’s Blog About Brain And Heart

”脳と心” の関係について

【行為的記憶と言語的記憶の差異,その比較手法等について】

 為的記憶は主にSPTs(subject performed tasks:被験者実演課題)によって研究されている.SPTsとは簡単な行為文の提示,被験者によるその行為内容の実演から構成される小課題である.SPTs条件において被験者は,行為文を実演した上で,その後再認や再生の記憶テストを受けることになる.

 上記SPTsと対照的に考えられるのはVTs(verbal tasks:言語的課題)であり,この課題では実際に行為文に示された行動を行うのではなく,その内容を言語的情報を媒体に記憶することになる.

 常SPTsとVTsのいずれにおいてもテスト時の行為の実演は行われず,記銘過程での実演のみである.それによって行為的記憶と言語的記憶の直接的な比較が可能であり,行為の実演の有無が記憶に対してどのような効果をもたらすかを検討できる.

 般的にSPTs条件のほうがVTs条件よりも記憶成績が優れているとされ,これをSPT効果と呼ぶ.しかし行為的記憶と言語的記憶は記憶成績以外にも様々な点で異なっており,その一つに符号化変数の効果の差異である.

 具体例としては,L.G.ニコルソンとR.L.コーエンの検討した生成効果の有無等が挙げられる.生成効果とは自分で作り出した情報は読んで得たものよりも保持されやすいという減少である.彼等は ”SPTsー生成条件” ”SPTsー非生成条件” ”VTsー生成条件” ”VTsー非生成条件” の4条件下でオブジェクトを用いた行為の提示,あるいは生成後の,その内容の記憶保持実験を行った.その結果VTs条件では生成効果が観測され,SPTs条件では観測されなかった.生成効果の他にも,処理水準効果学習の意図性の効果等に関しても同様の現象が報告されている.

 符号化変数の効果の差の他にも年齢による記憶成績の変化やメタ記憶の正確さ,系列位置曲線などにおいて異なる特徴を有する.

 た現在では,SPTsとVTsのほかに実験者の実演を被験者が観察するEPTs(experimenter-performed tasks:実験者実演課題)も比較対象とされている.