Doctor’s Blog About Brain And Heart

”脳と心” の関係について

【単一特徴探索と結合探索における被験者のパフォーマンスの差異について】

 る特定の特徴に基づいて目標刺激を探す行為を単一特徴探索という.一方複数の特徴を組み合わせて持つ目標刺激を探す行為を結合探索という.例えば複数の正方形の中から一つの円を探し出す場合,これは対象の形状のみを特徴として探索行為を行なっている.赤,青,黄等の様々な色の正方形の中から青色の円を見つける場合,形状と色という複数の特徴を組み合わせて探索行為を行なっている.このとき前者は単一特徴探索,後者は結合探索となるわけだ.

 れら2つの探索行動について,その差異に言及しよう.複数の妨害刺激の中から目標刺激を探し出す課題において,妨害刺激の数を独立変数,検出に要した時間を従属変数として,以下2つのパターンを想定してみよう.

 ずはこの課題が単一特徴探索である場合,妨害刺激の数がどれだけ増えても検出に要する時間はさほど変わらないだろう.これは各刺激に認められる特徴が1つであるが故に,少しでも異なる刺激が視界に入った際には突然それが飛び込んできたように感じられるためだ.これを特にポップアウトと呼ぶ.このように単一特徴探索における被験者のパフォーマンスとは並列走査的性質を帯びるものであるとわかるだろう.つまりは刺激を1つ1つ丹念に確認せずとも,全体を大まかにスキャンするだけで目標刺激の検出が可能である.

 に課題が結合探索である場合,妨害刺激の数と検出に要する時間の間には比例関係が認められるであろう.結合探索では前述したようなポップアウトは起きないためである.任意の1つの刺激が目標刺激であるかどうかという判断は,その刺激に注意を向けた際にその都度行われるため,結合探索は逐次走査的性質を帯びていると言える.

 のような探索行動におけるパフォーマンスの差異はA. トリーズマンによる特徴統合理論を支持するものである.特徴統合理論とは,外界からの視覚情報は固有の特徴次元(色,形態,空間周波数等)で処理,つまり異なる特徴毎に空間的なマップが形成され,それぞれ別個に作り上げられた表象は焦点的注意を持って統合,オブジェクトの照合が為されると仮定した探索行動における処理モデルである.各マップの統合は焦点的注意に依存するため,視野内の別の点に位置する複数の特徴が結びついたように知覚される結合錯誤は,焦点的注意に充分な注意資源が割かれず,統合に際し充分な時間が得られなかったために生起すると考えられている.先述のとおり,結合探索では逐次走査が行われるため,この特徴統合理論はその性質上代表的な初期選択モデルとしてよく知られる.